研究概要 |
本研究では高真空熱処理したアルカリ土類酸化物粉末にCO^<18>ガスを吸着させると昇温脱離ガスにCO^<16>が高い比率で含まれることを発見し,吸着COと酸化物微粒子表面の間の酸素同位体交換機構について次の点を明かにした。 1.MgOからのCO脱離ピ-クは約200K,400K,600Kに現われ,それらでの同位体交換率(R=CO^<16>ピ-ク強度のCO^<16>とCO^<18>両ピ-ク強度の和に対する比)は低温ピ-クで0.65,室温以上で0.8〜0.9である。ただしCO^<18>露出量が3000L(1L=1×10^<ー6>Torr.s)を超えるとRは急減し,その減少開始は熱処理温度が低いと早い。一方,電子顕微鏡観察及び回像からは,高い熱処理温度は表面構造の複雑化をもたらすことが分った。 2.非経験的分子軌道法によるモデルクラスタ-のエネルギ-計算からは,MgO(001)面点欠陥上ではCOとの酸素交換は起り得ず,Mg(111)面とO(111)面の〈011〉方向ステップ境界上の酸素空格子点で可能であり,そこではCO_3型架橋結合中間種が生成されることを見出した。 3.CaO,SrOの場合,CO脱離ピ-クの分布はMgOの場合とやや異るところがあるが、Rの値は同程度である。比較のためTiO_2,ZnO,NiOについてる実験したところ,結晶形の異なる前2者では同位体交換がほとんど起らず(ただしZnO高温ピ-クはR【approximately equal】0.75),岩塩型NcOではアルカリ土類酸化物の場合とほぼ同じRを得た 4.以上の結果から,研究課題とした酸素同位体交換は,d軌道の関与によって,あるいはバンドギャップの大小に影響されて起きる過程ではなく,酸化物表面の立体的欠陥サイトでの構造的変化によって起きる過程であると結論した。
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