研究概要 |
II_aーVI_b族化合物半導体(CaS,SrS)に希土類イオンを添加することにより、青色(SrS:Ce)、赤色(CaS:Eu)、白色(SrS:Ce,Eu)などの種々のEL発光を得ることができる。このため、カラ-薄膜ELの有望な母体材料として注目されつつある。これらの薄膜EL素子では、Ce^<3+>やEu^<2+>などのfーd遷移を示す発光中心が効率のよいEL発光を示す。 我々は、幾つかの実験結果より、希土類イオンを添加したCaS,SrS薄膜のEL励起機構として、次のようなモデルを提案した。まず高い電界による発光中心のイオン化(Ce^<3+>→Ce^<4+>,Eu^<2+>→Eu^<3+>)が生じる。引き続いて、イオン化した発光中心は伝導電子を捕獲して5d励起状態になり、5dー4f許容遷移により発光する。本研究では、この仮説を実験により直接的に明らかにすることを試みた。得らた結果を以下に示す。 1.CaS:Eu,SrS:Eu,SrS:Ce,K薄膜EL素子の伝導電荷光励起スペクトルを測定した。Cas:Eu,SrS:Eu素子では伝導電荷量の増加は400〜600nmの幅広い波長域で観察され、SrS:Ce,K素子では400nm付近に観察された。 2.CaS:Eu,SrS:Eu,SrS:Ce,K薄膜EL素子の伝導電荷光励起スペクトルとフォトルミネッセンス(PL)励起スペクトルを比較した。いずれの素子でも伝導電荷光励起スペクトルとPL励起スペクトルは、良く一致していた。これはCeやEu発光中心が5d励起状態に励起されると、電界によりイオン化されることを示している。この結果は発光中心のイオン化が励起過程の最初の過程であることを示唆している。 3.電界が十分高いとき、発光中心の5d励起電子は伝導帯に放出される。発光中心のイオン化の確率を電界の関数として定式化し、数値計算を行った。イオン化の確率は電界に依存しており、1ー2×10^6V/cm以上の強い電界でEuやCe発光中心のイオン化が生じると考えられる。
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