研究概要 |
400kVイオンビ-ム発生装置からのプロトンビ-ムをエネルギ-分析を行ったのち炭素フォイルに照射し透過後の励起水素原子の発光の偏光分光観測を行い,コヒ-レンスを含めた励起密度行列を測定した. 1.水素原子ライマンアルファ線の量子ビ-ト測定.弗化マグネシウムをコ-トしたトロイダル鏡のブリュウスタ-角反射直線偏光器採用により従来行っていた球凹面鏡に較べ大幅に分解能が改善され,ラムシフトによるビ-トの他に微細構造によるビ-トをも測定することができるようになった.位相測定精度が向上した.フォイル励起直後静電場を印加しシュタルク電子ビ-ト観測から,水素原子のn=2励起状態の奇コヒ-レンスを含めた全励起密度行列の完全決定を行った.これは本研究が初めてである.奇コヒ-レンス項に虚数成分があることがわかった. 2.同じくフォイル励起水素原子のバルマ-アルファ線のゼロ・フィ-ルド量子ビ-ト測定を行った.可視域なので1.の場合より偏光測定は容易であるが,要素数が多いので密度行列の各個別の完全決定は不可能であった.明確に決定できる偶コヒ-レンスにおいてやはり虚数成分があることがわっかた.しかも測定できる範囲において,電流密度依存性,入射ビ-ムエネルギ依存性は殆どないこともわかった. 3.前記は量子ビ-トを直接観測するものであるが,これと相補的なものとして新たに電場微分性の量子ビ-ト測定法を考案した.これは磁場印加でのハンレ効果に対応するものである.低電流密度従って低光量での測定が可能となった.この方法の測定によっても,やはりコヒ-レンス項には虚数成分があることが確認された.虚数成分の存在は従来提案されたいかなる励起モデルでも説明がつかない.本課題での実験的研究で明かになったので,今後の理論的研究の課題としたい.
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