研究概要 |
サブミリ波帯域用の、簡便な周波数可変振器の1候補として、磁束フロ-型超伝導発振器の開発研究をおこなった。 この発振器は、基本的には、一方向に長い超伝導体のジョセフソン線路(Nb/AlO_×/Nbの3層構造),4分の1波長のマイクロストリップ線路を4段直列の,インピ-ダンス変換回路,およびボウタイアンテナから成る。2年の研究期間内に2つの型のもの(Ver.1,Ver.2と名づける)を試作し、初年度においては(Var.1)i2つの発振部,ii)2つのインピ-ダンス変換部,iii)1つのボウタイアンテナ,iv)1つのモニタ-SIS(Nb/AlO_×/Nbの3層構造,2μm×2μmの大きさ)検出器より成る素子を4mm×4mmの水晶基板上に作り,アンテナからの放射は行なわなかったものの、電流一電圧静特性上に現れる,速度マッチングステップの観測と,モニタ-SISによるパワ-測定を通じて,発振の確認を行なった。この場合,ステップが立つ電圧から換算した発振周波数と,SISの準粒子ステップの幅から求めた周波数がー致することを確認した。Ver.1では,磁界を作るための電流回路も素子内に組み込んだため,発振特性にその影響が現われ,またよく断線もおこったので,第2年度においては、もっと単純な形(Ver.2)すなわち,i)発振部,ii)インピ-ダンス変換部,iii)ボウタイアンテナ各1つを,4mm×4mmの水晶基板上に作り,磁界は外部コイルによって印加するようにした。この素子でVer1よりも鮮明な速度マッチングステップが測定出来,また発振は,実際にアンテナから外部へ放射し,これを,較正したInSb電子ボロメ-タ-で検出し,発振が140GHz〜490GHzでおこなわれ,最大〜1μWの発振パワ-が得られることの結論を、実験的に得た。但し測定はすべて,液体ヘリウム温度(4.2K)で行なった。
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