研究概要 |
研究期間の延長によって、より詳細な実験を行った。ラットは4週令で購入し、飼育箱への順化がされないうちにストレス負荷実験を行った。その後、1週間経過後毎に定期的に水泳と走行をくりかえさせた。 Wister系ラットにも種類が違うと学習能力に大きな相違があることがわかった。学習能力の大きいラットでは,水泳させてもすぐに水面上に鼻を出して浮いていることを覚え、この状態では尿中の各種化学物質には大きな変化が見られなかった。しかし,通常のラットの4週令のものでは,比較的短時間の水泳でもストレスが極限状態になり,快復せずに死ぬものもあった。 本研究を行ってつぎのようなことがあきらかになった。 1).走行よりも水泳の方がストレス負荷量は明らかに大きい。 2).水泳させて大きなストレスを負荷させると,尿中Ca量は大きく変化しないが,Pの排泄量は多くなりラット体内でのクレブスサイクルが盛んになりPが多量消費されることがわかった。 3).エピネフィリンは水泳によって排泄量が増加し、長時間持続した。 以上のことから宇宙飛行士が宇宙に長期間滞在していると、精神的および心理的ストレスが大きくなり、通常のエネルギ-生産システムではリン酸不足状態になるものと推定される。その結果、リン酸の貯蔵庫である骨から多量のリン酸が供給される。こうして骨密度の減少が生じるものと考えるのが妥当であろう。したがって旧ソ連の宇宙飛行士のように,家族や有名人との対話等によって宇宙空間滞在中のストレスを減少させるようなことが骨の問題だけでなく、他の器官の異常も防げるものと推定する。
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