研究概要 |
不均質材料の衝撃強度特性を明らかにするために2種類の原子炉用黒鉛の板試験片と,長繊維の方向を変えた層を組合わせたCFRP円筒試験片を用いて,衝撃疲労特性とひずみ波の伝播特性の研究を行った。 初年度は主に黒鉛の単発衝撃破壊挙動及び衝撃疲労特性の研究を行って次の成果を得た。この結果は国際会議ECF8において報告した。 1)衝撃疲労寿命には見かけの疲労限がみられ,単発衝撃の応力ーひずみ線図上の折点との対応がみられた。 2)衝撃疲労寿命の寸法効果はほとんどみられなかった。これは応力波の減衰が大きいことによる。 3)疲労き裂はその前方の微小き裂との合体による段階的に進展した。 4)疲労強度には切欠きにより応力集中の効果がみられた。 5)衝撃圧縮速度が増せば動的弾性率は低下した。 6)衝撃繰り返しの初期には残留ひずみが増すがその後は飽和した。 第2年度には,黒鉛の継続研究と共に,不均質性が波動伝播に及ぼす影響をより詳しく解明するために,初年度に続いてCFRPのひずみ波の伝播に及ぼす繊維方向と積層の影響を下のように明らかにした。この結果は国際会議ICM6において発表の予定である。 1)ひずみ波の伝播速度は積層順によらず,弾性率の複合則によって評価できる。 2)ひずみ波の伝播効率は衝撃圧縮では0゚層の数と共に増し,衝撃ねじりでは減じた。 3)静ねじり下での衝撃圧縮により波動には積層順序が複雑に影響する。 これらの結果に基づいて,今後はCFRPの最適複合法を見出し,また黒鉛と炭素繊維の複合材料の開発に役立てていきたい。なお,CFRPの破壊の過程と形態についてはさらに詳細な研究が必要である。
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