研究概要 |
本研究では,次世代航空機材料として注目されている2種類のアルミニウムーリチウム合金2090および8090について,疲労強度特性を総合的に評価することを目的にしている.実験結果は,従来合金の2024および7075との比較のもとに,詳細に検討された.主な結果は以下のとおりである. 1.ALーLi合金の引張強度は2024合金とほぼ一致しており,7075合金より低い.一方,伸びや絞りは,従来合金よりもかなり小さい.AlーLi合金の疲労強度は10^5回以上の長寿命域では,従来合金より優れている。この挙動はAlーLi合金の高いき裂発生抵抗に起因している. 2.亜時効および過時効処理によって,き裂発生および進展抵抗が低下し,疲労強度が低下する.き裂発生および進展は,時効により析出したδ'相に支配されている. 3.3%NaCl水溶液中の疲労強度は,大気中よりもかなり小さい.AlーLi合金の腐食疲労強度は,時効条件に影響を受けず,従来合金よりも優れている. 4.AlーLi合金の切欠き感度は,従成合金よりも低い.この挙動は8090合金において顕著である.8090合金の最も鋭い切欠き(応力集中係数=8.18)の場合にのみ停留き裂が観察された. 以上のように,アルミニウムーリチウム合金の疲労強度の総合的評価を行い,本材料が航空機材料として適切な特性を有しているかを検討し,実用化に対する指針を与えることができた.
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