研究概要 |
1)低温度せん断試験 試作した同心2重円筒試験機を用いて低温度条件下での潤滑油せん断特性を調べた。粘性流体および粘弾性体と挙動する温度領域では、潤滑油のせん断応力はせん断速度の増加とともに高くなる。しかし、潤滑油のガラス転移温度以下になると、せん断滑りは内筒表面またはごく近傍の狭い層内でのみ生じ,滑り速度に応じた限界せん断応力が存在する。限界せん断応力は潤滑油の分子構造により異なり、トラクション係数の高い潤滑油の方が限界せん断応力も大きい。 2.4球滑り接触試験 当初のチムケン試験機をより基礎的デ-タが得やすい4球試験機に変更して実験を行った。固化膜形成を含めた油膜形成状態は潤滑油構造の影響を著しく受け、最も固化しやすい多縮合ナフテン環が最も厚い油膜を形成する。また,高滑り速度条件下で固化膜ないしは流動性をほとんど示さない油膜を一旦形成すると、滑り速度を低下し油膜形成条件を悪化させても高滑り速度条件下で形成された厚い油膜を保持し,摩耗等の表面損傷を軽減する。 3.2円筒試験,4円筒試験 分子構造の異なる潤滑油を用いて,転がり滑り試験を実施した結果を要約する。(1)接触域において潤滑油が固化または弾塑性体として挙動する条件では,粘性流体とは逆にせん断速度の増加に伴い,トラクション係数は低下する。(2)潤滑油が固体的挙動をする領域でのトラクション係数は潤滑油の種類,滑り速度,接触圧力,潤滑油温度等の作動条件に拘らず潤滑油の粘度ー圧力係数αと平均ヘルツ圧力pとの積,αp,によってほぼ決定できる。ここでαpは接触域での潤滑分子のパッキング状態の尺度と考えられる。
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