研究概要 |
本研究では,三次元複雑形状に非圧縮粘性流れ場の解析に適する高精度・高効率の高レイノルズ数差分スキ-ムとその計算プログラムが開発された。本スキ-ムは従来の物理速度を写像(計算)空間で求める解法とは異なり,写像空間の座標軸方向の速度成分である反変速度を未知変数に採用しているので,固定壁境界条件や固期境界の取扱いが正確で,乱流モデルの導入も容易となる利点がある。そのために,まず反変速度で完全に記述された曲線座標系の運動方程式がナビエ・スト-クス変程式から新たに誘導された。次いで,MAC法から派生したSMAC法あるいは部分段階法を曲線座標格子に拡張した陽的時間進行差分スキ-ムが提案された。MAC法と同様に写像空間の食違い格子を用いて,連続の条件を恒等的に満足させ,圧力の市松模様の震動の発生を完全に押えることができる。さらに,台形則を適用した陰的スキ-ムに拡張され,近似因子化法と陰的部分に粘性項を考慮することにより安定化と計算時間の短縮が図られた。これらの陽的・陰的スキ-ムでは,対流項をQUICK法または3次TVD法で離散化して反変速度の運動法程式が解かれる。後向きステップのある二次元および三次元ダクト流れ,二次元キャビティ流れの数値シミュレ-ションや回転している相対座標系での軸流送風機のロ-タを通る流れの解析により,本解法の妥当性が検証された。上述の陰的スキ-ムは,クランク・ニコルソン法とニュ-トン反復法を用いて非定常スキ-ムにも拡張された。二次元の翼列とステップ・ダクトを通る高レイノルズ数非定常流れの直接シミュレ-ションより,翼後流中への渦放出過程あるいはステップ背後の再循環域での渦挙動が可視化された。なお,低レイノルズ数形乱流モデルを用いた翼列まわりの乱流解析も行われ,直接シミュレ-ションによる時間平均流れと良く一致することが示された。
|