研究概要 |
食品凍結の鮮度は冷却速度に依存していることはよく知られている.したがって,食品鮮度をコントロ-ルするためには,冷却速度による細胞内での冷却・凍結挙動への影響を把握する必要がある.しかし,これらの挙動は単に一つの細胞内における流れ・温度・濃度場の推移を評価すればよいというものでなく,細胞膜を通しての細胞内部と外部との熱および物質交換を考慮しなければならない. 本研究では,食品を細胞の集合体と見なし,細胞成分としては食品凍結に最も大きな影響を与えると考えられる成分中最も凝固点の高い自由水に注目することにし,細胞集合のモデルを矩形容器列,自由水をNaCl水溶液でシュミレ-トすることにした.また,本研究で最も注目している細胞膜には機能および強度上の理由からマイクロポ-ラスフィルムを用いることとした.すなわち,本研究は,食品凍結に関する基礎的な熱工学的研究として,食品凍結において最も複雑な挙動の一つと考えられる細胞膜を通しての食塩水の冷却・凍結挙動を取り上げたもので,これらの挙動をレ-ザホログラフィ実時間干渉法を用いて可視化測定したものである.また,比較のため,細胞列の仕切りをマイクロポ-ラスフィルムのほか,銅板,仕切りを設けない場合と変化させ,被冷却流体としてはNaCl水溶液のほか,水の場合も同じ実験を行った.それらの結果から以下の結論を得た. 食塩水を冷却させた場合,仕切りによる差異は小さいが,凝固が進行してからは第1セルにおける塩化ナトリルムの析出が膜を通して第2セルにも及ぶ.従って,食品凍結の解析において凝固後は膜を通しての熱および物質移動を考慮する必要がある.水の場合,膜を明らかに透過することが可視化測定により検証できた.しかし,伝熱特性において水を全く透過させない銅板を仕切りとした場合との差異はほとんどなかった.
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