研究概要 |
直鎖有機分子よりなるステアリン酸カルシウムの分子(または結晶)配向を、真空蒸着中の基板沿面に印加した電界により制御する可能性を検討するのが本研究の目的である。初年度は、ステアリン酸カルシウム蒸気の一部をイオン化し、NaC1基板へ蒸着した時の結晶配向を調べた。蒸気のイオン化は、エピ成長をわずかに促進したが、結視配向は主に基板温度により支配され、次の結果を得た。 1.基板温度約50℃以下では。ステアリン酸カルシウム(110),[001]//NaC1(001),〈110〉の二方向平行配向であった。 2.基板温度が70℃以上では、ステアリン酸カルシウム(001),[110]//NaCl(001),[110]の垂直配向であった。 3.基板温度が55〜65℃のとき、ステアリン酸カルシウムの平行配向C軸は、NaC1の[110]または[110]のいずれかに、一方向配向することを見い出した。これは、一たん垂直配向した薄いステアリン酸カルシウム上に、平行配向し直した時におこる現象であることを確かめた。 次年度は、基板沿面の電界が、ステアリン酸カルシウムの方位配向に与える効果を調べた。1.室温NaC1基板の[110]方向に100〜200v/cmの電界を印加しながら、一部イオン化したステアリン酸カルシウムを蒸着すると、その結晶形と配向が、特に負電極近傍で乱されることが分った。電界が無い時は、針状であった結晶は曲げられたようになり、円状となるものも見られた。 2.ガラス基板に30v/cmの電界を印加して、イオン化蒸気による蒸着を行ったところ、ステアリン酸カルシウムのC軸が電界と平行に方位配向する例を見い出した。しかし、この現象は再現性が得られず、現在実験を続行中である。
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