研究概要 |
アモルファス磁性体の特長である,磁気特性の顕著な人工的制御性を利用して,ヘリカル異方性を誘導することにより磁壁のピンニングサイトを付与することのより,アモルファスリボンバルクハウゼン跳躍センタ-素子の開発を試みてきた.本センサ-素子はパルス電圧ジェネレイタ-として機能するため,無電源で,信頼性の高い回転数計,方位センタ-等を構成できる。最終年度では,新しく開発したマイクロKerr顕微鏡を使用して,センサ-素子の磁化過程を観察し,パルス電圧の安定性などについて検討した。その結果,以下の新しい知見が得られた。 (1)バルクハウゼン跳躍が生じる臨界磁界は,指導される磁気異方性から期待される磁壁ピンニング力に比べて1/10程度に小さい。この原因は,一斉磁化反転が,強い反磁界のため薄帯エンド部に残留する逆磁区の急激な成長に依るためである。この為,磁化反転により誘起されるパルス電圧のジッタは比較的大きい。ジッタ改善のためには,誘導磁気異方性の大きさを制御して,磁壁ピンニング力を逆磁区生成磁界以下に抑える必要がある。 (2)アモルファス磁性体の閉磁路伏のアンシンメトリ-構造を有する。これは,試料表面での静磁エネルギ-を低減させるためである。閉磁路状壁には,磁壁表面部(ネ-ルキャップ)の極性の変化(キャップスイッチ),磁壁の断差(オフセット),磁壁の折れ曲がり(ブロックラインの存在)が観察された。これらの現象は,磁壁内部のスピンのカイラリティの変化を考慮すれば旨く説明されることがわかった。
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