研究概要 |
電磁ハイパ-サ-ミアにおける人体内電力損分布および温度分布の解析に関する成果は次の通りである。 1.人体の一部領域のみを対象にして電磁界をFDーTD解析できるように,人体のような損失媒質中に解析領域境界がある場合に対して適用できるような新しい吸収境界条件を導出した. 2.導波管内部のポスト構造の励振部に対してFDーTD解析法によって精度高く電磁界解析できるようなモデル化法を確立した. 3.人体を冷却用水ボ-ラスを介して複数個の導波管開口アンテナ型アプリケ-タで加温するマルチアプリケ-タシステムに対して,水ボ-ラスおよび人体の構造や不均質性だけでなく導波管内の励振部構造も含めて実際のモデルとほとんど同じモデルを用いて電磁界問題をFDーTD解析できる一連のアルゴリズムをほぼ完成させた. 4.電磁波照射によって人体中に発生した電力損分布からくる熱源分布と人体内部および外部からくる冷却効果によって人体中の温度分布は時間的に変化するが,この温度分布変化をIAD法に基づく差分計算法によって近似計算するアルゴリズムをほぼ完成させた. これらの計算法確立に関する成果の他,本研究では具体的数値計算結果の検討から以下のような知見を得た. 1.癌腫瘍を複数個の電磁波アプリケ-タを用いて人体周囲から加温治療するためのハイパ-サ-ミア装置としては,電界が人体軸に対して平行に偏波した電磁波(TM型)よりも電界が人体軸に対して垂直に偏波した電磁波(TE型)を照射する装置の方が電力損分布の人体軸方向における集束性が良い分だけ加温効率が良い. 2.水の存在する領域があるとその領域に沿って電磁波が広がる傾向が現れるので,冷却用水ボ-ラスは加温する部分付近に限って配置する方が良い. 3.水ボ-ラスの寸法の違いは人体表面方向における温度分布の広がりだけでなく温度が最大になる位置にも影響を与えるので,これはでハイパ-サ-ミアにおいてインピ-ダンスマッチングおよび表皮付近の冷却の目的で用いられてきた水ボ-ラスの役割を,人体内部の温度制御の観点から見直す必要がある.
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