研究概要 |
ビル内情報機器端末を無線ネットワ-クにより接続する構内無線通信は経済性と機動性に優れているが,多重伝搬波の干渉のため安定性と信頼性に課題がある.平成元年度から2年間にわたり,屋内において高安定な無線通信方式を実現するために必要な基本技術について研究を行い,以下のような結果を得た. 1.“室内における多重波伝搬構造の把握",即ち到来電波の数と到来方向及び遅延時間を推定した.到来方向の推定においては,(1)被測定領域が狭くても高分解能が得られ,(2)測定装置が簡易でよく,(3)雑音の存在する環境においても推定可能,という特長を有するMUSIC法を用いた小形アンテナの回転走査による多重波到来方向推定法を提案した.遅延時間においても,受信アンテナとして測定周波数範囲内で指向性が変化しないものを用い,測定周波数を一定間隔で掃引して受信すると分解能の高いMUSIC法が適用できる.計算機シミュレ-ションおよび実験により,これら推定法はS/N比30dBの場合,到来方向に関しては1波長の回転半径で5度,遅延時間に関しては100MHzの周波数帯域で3nsの分解能を有することがわかった. 2.次に,同一測定系から多重波の到来方向と遅延時間を同時に推定する方法を提案した.これにより到来方向と遅延時間との間の対応付けが容易にでき,伝搬経路が一層明確となる.接近した2種類の周波数で小形アンテナの回転走査によってデ-タを取得し,これにMUSIC法を適用して推定する方法である.室内においてアンテナ回転半径1波長,周波数1.29,1.31GHzで実験を行った.その結果,直接波に対してー20dB以上の波の数は5〜10,それらの到来方向は水平面内でほぼ一様に分布しており,直接波に対する遅延時間差は50ns以下であった.これより室内においてはかなり複雑な電波伝搬環境であることがわかる.このような電波環境下でのデ-タ通信にとって,一昨年から研究を行っているダイバ-シチ受信方式が安定性と信頼性の点で不可欠であるといえ,到来方向分布が水平面内でほぼ一様であることから指向性ダイバ-シチが有力である.
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