研究概要 |
本研究はインバ-タ・誘導電動機系で軽負荷・低速度運転の場合に現れる不安定現象を分岐理論の立場から解明することを意図したが, この現象の直接原因はインバ-タではなく, 誘導電動機自体にあることが明らかになったため, 現象の本質に重点をおく立場から, 可変振幅・可変周波数の正弦波電圧で駆動する場合について研究を行うことにした。 パラメ-タとして周波数, すべり, 負荷トルクを考え, この3パラメ-タの空間における平衡点の分岐と型を明らかにし, 次の結果を得た。 (1)双曲形平衡点は分岐理論において_OPD,_1ND,_2PD,_3ND形(添え字は実数部が正の特性指数の個数)と呼ばれている4種類のみが現れ, 安定なのは_0PD形のみである。 (2)トルク・速度特性の峰で接線分岐が起こり, _OPD,_1ND形は低すべり側(靜的安定領域)に,_2PD,_3ND形は高すべり側(靜的不安定領域)に現れる。 (3)_0PD,_1ND形の境界および, _2PD,_3ND形の境界でHopf分岐が起こり,_1ND,_3ND形の側でリミットサイクルが生ずるが, 安定なものは_1ND形領域にのみ現れる。 (4)接線分岐集合は, 磁気飽和を無視した場合には周波数・すべり平面に垂直であるが, 磁気飽和の影響によって, この集合はこの平面に垂直ではなくなり, かつ靜的安定領域が拡大する方向に変形する。 (5)Hopf分岐集合は, 磁気飽和を無視した場合には周波数・すべり平面に平行な断面がバナナ形の第1多様体のみから成るが, 磁気飽和の影響によって第1多様体はしだいに収縮し, その低すべり側に断面がバナナ形の第2多様体と断面が弓形の第3多様体が現れる。 以上の結果はインバ-タ・誘導電動機系の安定化制御系の設計に有用な指針を与えるものと考えられる。
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