研究概要 |
コンクリ-ト構造物に限界状態設計法を適用していく上で,最も基本となるのは,合理的な各種部分安全係数の設定である。特にいわゆるせん断破壊に関して,その脆性的な破壊を避けるという面からも,破壊機構の定量的解明とそれに伴う設計上の取扱い方法の確立は重要である。 本研究は,鉄筋コンクリ-ト部材が,強震時のように降伏点をはるかに越える大変形の正負交番載荷を受ける場合や,疲労破壊が問題となる高サイクルの繰返し載荷を受けるような動的荷重下におけるせん断挙動について小型鉄筋コンクリ-トはりの載荷実験から明らかにし,またせん断補強鉄筋の補強効果及びせん断破壊を防止するための合理的な補強方法について検討を加えたものである。その結果,静的載荷では曲げ破壊する場合でも大変形正負交番載荷を受けるとせん断破壊が卓越してくること,せん断破壊を抑制するためのせん断補強鉄筋の割増しの効果は主鉄筋量が大きくなるにつれて,a/dが小さくなるにつれて,有効高さが大きくなるにつれて,すなわち,せん断力が大きくなるにつれて低下することが明らかになった。せん断補強鉄筋量を通常の場合の1.4倍程度まで割増ししてもせん断破壊を防止できない場合もあり,設計上の配慮が必要である。また,鉄筋コンクリ-ト部材の水中での疲労特性に関して,気中では曲げ破壊をする場合でも水中ではせん断破壊が卓越してくること,疲労強度は水中では気中より15〜25%程度小さくなること,せん断補強鉄筋の効果は水中では気中など期待できないこと,水中では斜めひびわれの発達,進展が非常に急激で,そのまません断破壊につながっていくこと等を明らかにした。
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