平成元年度及び2年度の2箇年にわたり実施した本研究は、薬液注入、裏込め注入などの各種注入工事や泥水式シ-ルドにおける泥水加圧のように注入材を地盤中で加圧する場合の地盤の割裂現象を実験的に調査したものであり、地盤の割裂発生のメカニズムと割裂圧の大きさを検討したものである。 実験においては、粘性土と砂質土の両者を対象として、割裂圧に及ぼす地盤の種類(透水性、一軸圧縮強さ)、注入材の粘性、土被り厚さに対する加圧空洞の大きさの影響を調査し、これら諸要因を考慮した割裂圧の算定式を提案している。主な結果は、以下の通りである。 (1)割裂圧に及ぼす注入材の粘性の影響は、砂質土より粘性土の方が大きい。粘性土の割裂圧は大きさは、一般に注入材のフロ-値が増加するにつれて大きくなるが、フロ-値が30秒を超えると割裂圧に及ぼすフロ-値の影響はほとんどない。 (2)粘性土の割裂圧の大きさは、円筒状空洞の方が球形状空洞の場合よりやや小さい。 (3)砂質土の割裂圧の大きさは、砂の透水性が大きい場合には極限空洞内圧に達しうる。 (4)割裂圧の大きさは、注入孔の径に対する土被り厚さの比(径比)が10未満では径比が小さくなるにつれて減少する。 (5)裏込め注入に関しては、数多くの現場注入状況が、提案した割裂圧の算定式と実際の裏込め注入圧の関係から予測される注入状況と一致している。 以上のような結果を明らかにでき、所期の研究目標を達成することができた。
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