研究概要 |
マルチハビテイションは,広域の地域に複数の住居を持ち,生活時間をシェアリングして暮す居住形態である。この考えは,大都市圏内の住居条件の悪さを,大都市圏外の別荘等で補うという形で発想されているが,マルチハビテイションの対象となる地域側からは,地域振興の1つの戦略として期待を持ち得るものである。すなわち,マルチハビテイション居住の購買や交流による地域の産業面,文化面等での活性化、更には人口の定着,企業の進出という地域発展のシナリオを描き得る。本研究では,マルチハビテイションを戦略とした都市形成シナリオの実現可能性と良好な都市環境を形成するための規制,誘導のあり方を検討した。 平成元年度には,8地域のマルチハビテイション進行地域の現地調査及び千葉県御宿町と茨城県大洋村でのアンケ-ト調査を実施し,マルチハビテイションに対する地元地域住民並びに需要者の意識を把握した。平成2年度には,第1に,上記アンケ-ト調査と類似した調査を実施している新潟県湯沢町,静岡県伊東市,熱海市の調査結果を入手し,比較分析を行なった。第2に,湯沢町の開発条例,伊東市の景観条例等に見られる開発指導のあり方について検討した。第3には,伊東市を対象に住民登録転入届の調査を行い,人口定着の経年的過程を調べた。 (ア)民間業者による先行的な開発により景観優良地区や拠点施設の種地が占拠されたり,都市施設整備等で地域に財政負担を生じる開発が起っている等から,都市形成のための計画の策定及びこれを担保する法制度の整備が重要である。(イ)地元住民と需要者との意識の違い,交流の欠除,地元での購売の少なさ等地域の活性化に結びついておらず,これらを噛み合せる施策が必要である。(ウ)伊東市の例では,別荘地開発後25年位経過すると人口定着が始っているが,60才以上層が約35%を占め,シルバ-化の恐れがあること等,良質な都市形成を図る上の課題が抽出された。
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