研究概要 |
本研究の目的は,急速ろ過用のろ材として多用される珪砂を対象に,ろ材の表面特性,ろ過初期のフロック付着特性およびこれらの相互関係を解明することにより,ろ材の開発と選定に有用な情報を得ることである。一連の研究成果はつぎの通り。 1.珪砂表面をX線分析し,主要元素はケイ素と酸素(よって主要化合物はSiO_2)であること,珪砂の色はFe,Ca,Mg,K,Alなどによって変化すること,Alはいずれの色の珪砂にも含まれること,鉱物組成はほぼ一様であるらしいことなどが明らかになった。 2.電顕観察によると,珪砂表面はエッジによって面に区分され,それぞれの面は比較的平滑な部分と凹凸部分からなること,前者では数千〜10^4倍でミクロン規模の規則的な縞状起伏が,また後者では亀裂,段差,窪み,隆起などフロックより相当大きな凹凸と,突起,陥没孔,縞状ないし鱗状起伏などフロック規模の凹凸の存在が確認された。 3.珪砂表面でのフロックの補捉過程は,流れの上流面へのフロック(核粒子)の配置,核粒子が中心となっての後続粒子補捉の進行(点型抑留物),これらの接合と抑留表面の高密化・平滑化過程から成り,ろ材表面の核粒子付着部の重要性が示唆された。 4.金コ-ティングした珪砂としない珪砂を用いて中性pH域でろ過を行った。その結果,Alの不溶解領域(pH6〜6.5)で金コ-ティングろ材の濁質補捉率の増加は僅か1.5〜3%に過ぎず,フロックの補捉に及ぼすろ材表面の化学的効果は小さいことがわかった。 5.上向流または不向流ろ過に用いた珪砂を対象に,フロックの初期付着部位を電顕観察したところ,ろ過方向にかかわらず,フロックの補捉はろ材表面の凹凸と深く関わっていた。よって粒子補捉に関しては化学的効果よりも物理的効果が大きいと判断された。
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