研究概要 |
草木ダム湖について全有機炭素(TOC),窒素(N),リン(P),溶存酸素(DO)等の濃度及び水温の流下方向及び鉛直(水深)方向の分布並びに日射,流入流出水量の調査を行い、湖内の流動は鉛直一次元流れで近似できることを明らかにし、TOC,N,P,DO,水温,クロロフィル,Phormidium tenue(P.tenue)等の濃度分布の時間変化を表す式(水質生態モデルによる式)を示した。式中のパラメ-タに対して実測値及び従来の湖沼等に対して種々報告されている値の平均的な値を与え、式の数値解析を行い水質及びP.tenueの年間変動をシミュレ-ションした。計算値は年間の水質変動の傾向をよく表しており、P.tenueの群体数変化についても、第一発生期の最大群体数出現ピ-クに合わせるようにP.tenueの最大比増殖速度を2.5 1/日として計算すれば計算値は実測値の傾向によく一致した。なお、夏期洪水流により湖水が置換される場合、TOC等の濃度分布は大きく変動し、特にSSの濃度変化は計算値と実測値と大きく異なり、より詳細な観測デ-タが必要である。草木ダム湖ではリンがP.tenueの制限基質とみなされ、P濃度の低減により、P.tenueの増殖を抑止できるが、鉛直方向に混合し水温及び栄養塩濃度を低下させることにより抑止することもでき、この場合約30〜40mの水深からの混合により群体数は約半減できる。P.tenueの群体数の変化は栄養塩濃度の測定結果があれば水温測定により、提案したモデルにより推定することができるが、異臭味物質(2ーMIB)濃度とP.tenue群体数との関係は明確ではない。P.tenueの群体数が極めて大きい場合でも2ーMIBが測定されないことがあり、2ーMIBの発生におよぼす水環境の影響について今後検討することが必要である。
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