研究概要 |
本研究は、ゴルフ場で使用される除草剤、殺菌剤、殺虫剤などの農薬の健康リスクを評価し、リスクを軽減するためのマネ-ジメントのフレ-ムワ-クについて検討をおこなったものである。 リスク・アセスメントのうちで,環境中の運命予測の部分では,指標農薬であるシマジンの雨天時流出観測をおこなうことで,その流出率を決定した。ダイアジノンやクロロタロニルなどの他の農薬の流出率に関しては,土壌中有機性炭素と間隙水との平衡分配を考慮して推定した。 運命予測の定式化にあたっては,ゴルフ場とその下流に位置する貯水池を水・大気・土壌のコンパ-トメントにわけ,流入,流出,分解,揮発,沈殿のメカニズムを式び表現し,農薬の収支式を基礎として,飲料水取水地点での農薬濃度を推定した。 曝露される人として大人と子供を区別し,子供を高感受性集団の代表とみなした。 農薬の毒性として慢性毒性と発ガン性をとりあげた。まず慢性毒性については各農薬の許容1日摂取量(ADI)の1%を飲料水経由の許容量として割りあて,その量に対する1日あたり曝露量の計算値の比の値によって推定した。他方,発ガン性が既知の農薬については,低濃度外挿のモデルを用いて発ガンリスクを推定した。 例えば、流域面積の約2〜3割がゴルフ場で占められる事例では,クロロタロニルについて生涯余剰リスクが10万人に1人の発ガンを余分にまねく水準であることが判明した。 以上の方法をいくつかのゴルフ場の開発事例に適用した結果に基づき、さらに自治体の関連部局の保全ないし開発規制策を比較検討することによって、リスク・マネ-ジメントの際に必要な知識の整理および説得・交渉の論理について考察した。
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