研究概要 |
都市域における夏期の光化学大気汚染と冬期の窒素酸化物大気汚染は未解決の大きな問題として残されている。どちらの場合も発生源の情況,気象条件,化学反応が複雑に関連しているため発生源と環境濃度との関係は必ずしも十分に解明されていない。本研究においては大気汚染監視デ-タやフィ-ルド観測デ-タを用いて高濃度大気汚染出現メカニズムを明らかにするとともに各種の計算機予測モデルを用いた解析を行い発生源と環境濃度との因界関係を明らかにした。研究成果を以下に示す。 (1)夏期の光化学大気汚染に関しては主に東京首都圏地域を対象として解析を行い発生源対策シナリオを検討した。解析の結果,排出源強度と環境濃度との関係は極めて複雑であり計算にあたっての初期条件や境界条件によって予測濃度が大きく異なるとの結論が得られた。このため今後は特に自然起源の炭化水素成分の寄与を定量的に明らかにすることが重要である。 (2)冬期のNO_2汚染に関しては全国における観測デ-タを解析し、その地域的,季節的特徴を解明した。この中で特に東京首都圏における弱風時の結果をボックスモデルを用いて再現しNO_2の生成に及ぼすバックグランドO_3と光化学反応の寄与を解析した。解析の結果冬期においても光化学反応による影響が認められ午後から夕方にかけて光化学反応による寄与が最大となる。また日射が強い場合には日中には光化学反応によりNO_xの7%程度がPANやHNO_3へ変質していることが明らかとなった。 これらの研究により夏期及び冬期の都市域における大気汚染の基本的な特徴が明らかにされたが、高濃度出現の動態は、発生源,気象,地形等が密接に関係しているため対象とする都市の特徴を正しく組み込んでモデル解析を行い具体的な大気汚染対策のためのシナリオを検討することが必要である。
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