1.住宅のシェルタ-性能と室内における熱・湿気・空気環境の実測. 今年度は、仙台市と盛岡市に新築された戸建住宅計10戸を対象として実測調査を行った。実測の内容は、住宅全体の気密性能と断熱性能で、現在東北地方に建てられる一般的な戸建住宅のシェルタ-性能がどの程度のレベルにあるかを調べた。その結果は、施工業者や建設工法の違いによりばらつきはあるものの、最近の住宅における断熱気密化の傾向を裏付けるものとなった。すなわち、これから東北地方に建設される住宅はさらに断熱気密化が進み、それに伴って、結露や室内空気汚染の問題に対する取り込みがますます重要となることが明白となった。また、昨年度に行った実測調査の結果の分析を進め、居住状態の室内における熱・湿気・空気環境と換気計画の関係の重要性を確認し、シミュレ-ションをする際の照合デ-タの整備を行った。 2.表面結露および内部結露の危険性判定に関する予測手法の検討. 昨年に引き続き、定常状態における壁体の結露の危険性判定に関する計算法を検討し、そのアルゴリズムを作成した。これに基づきいくつかのケ-ススタディを行い、現状の断熱気密化住宅の壁体構成においては、断熱材室内側に設置する防湿層の透湿抵抗が結露防止のカギを握っていることを確認した。これは、いかに防湿層の施工を入念に行うかという実際上の問題も含むものである。 3.室間換気を考慮した多数室の温湿度解析法の検討. 昨年度作成した、室間換気を考慮した室温変動計算プログラムを用いて、住宅の断熱気密化が室内環境におよぼす影響を系統的に分析した。とくに、気密性能の向上は、居住状態において、相対湿度と二酸化炭素濃度の上昇をもたらし、適切な換気計画の必要性を確認した。ただし、本計算において、壁面での結露と吸放湿の考慮は今後の課題である。
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