研究概要 |
本研究の目的は,住環境が成熟過程にある建築協定団地での協定運用の実態と居住者意識の形成動向を把握し,住環境の保全・誘導に対する合意形成手法を検討するものである。そのために,建築協定が有効期限に達した協定地区での更新実態を把握するとともに,地区住民の合意形成活動の実態調査を行った。また,「合意協定地区」と「一人協定地区」の利害得失を様々な側面から比較しながら,住環境保全に対する合意形成活動の特徴を明らかにした。その結果,主として次のようなことが解明された。1.建築協定の更新状況を把握した結果,一人協定地区においても更新率が高く,協定の有用性が高く評価されていた。また,一定の規模をもち住宅専用地のイメ-ジが強い地区で更新率が高く,協定者数の多い地区,協定区域や協定内容を変更した地区では合意形成に長期間を要し,しかも合意形成活動の長期化は合意率を低下させる要因にもなっていた。2.建築協定に対する合意形成活動は,協定の締結背景や地区条件などにより特徴をもち,アンケ-ト調査の実施や住民のもつ専門知識,自治会組織の活用は,住民合意を確保する手法として有効であった。3.合意協定地区と比較して,一人協定地区では最初の締結が容易である反面,更新時には地区住民の全員合意を必要とするために合意手続き作業に多くの労力を要していることや,更新を機会に協定内容や協定区域を変更する場合が多かった。4.住民自治のもとにより建築協定を弾力的に運用していくためには,住民のコミュニティ形成を有効に活かすことが最も重要であった。5.建築協定地区において住環境の保全・誘導に対する合意形成を確保するためには,制度運用のみではなく,建築計画的手法やCIのようなイメ-ジ戦略も必要であること等がわかった。
|