研究概要 |
前年度においては,高温岩盤内に開削された実際の坑道の壁面に厚さ3cmの断熱材を吹付け,岩盤から気流への熱伝達制御に対して,ライニング施工直後には確かに効果のあること,坑道開削直後には特に効果のあることを確かめた。また,岩盤内熱伝導,断熱材内熱伝導および断熱材または岩盤(断熱材吹付けをしない場合)から気流への熱伝達の連成解析をパソコンにより行うことのできるシステムを確立した。 本年度は,ライニングの厚さの効果を検討するために,パソコンによる熱伝導・熱伝達解析システムを用いて,種々の解析を行った。その結果つぎのことがわかった。 1)吹付け厚さ3cmの原位置試験結果は,吹付け後の経過時間が短い間は断熱ライニングによって気流に与えられる熱量は半分以下になるが,6ケ月以上経過すると断熱ライニングを施さない場合と大差なくなることを示しており,予測解析結果でもそのことが得られている。吹付け厚さを6cm,9cmと厚くした場合の解析結果は,吹付け厚さの増大によって当然断熱効果は高まるが,長期間経過すればするほど,その程度の厚さの増大では,断熱ライニングの厚さの効果はなくなり,岩盤からの熱伝達量はライニングが無い場合と大差がなくなる。2)ライニング厚さの増大に対する断熱効果の増大の割合は指数関数的に減少し,一方,吹付けのための経費は厚さの増大とともに指数関数的に増大する。したがって,実際に断熱ライニングを行う際には,まず吹付け厚さに対する経済性評価を確立し,つぎにそれを考慮して最適の吹付け厚さについて検討すればよい。
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