研究概要 |
アルカリ乾電池の負極活物質として使用されている亜鉛には、集電効果の上昇と無負荷時の自己放電抑制のため水銀が添加されているが、この添加水銀量の低減を目的として、亜鉛と水源の濡れ現象の解析を行なった。まずKOH水溶液における亜鉛の溶解について検討したが、亜鉛の自己放電は結晶面によって異なり、最密原子面の(0001)面で最も速く、面密度が小さい(1100)面が遅いことがわかった。また水銀としては亜鉛表面に薄く均一に付着していれば十分に自己放電を抑えることができ、従来のように数%の添加量は必要ないことがわかった。 亜鉛に水銀を薄く、均一に付着させることが重要であることがわかったが、大気中で亜鉛と水銀を反応させつも十分な濡れが生じず、均一に付着しなかった。そこでKOH水溶液中で亜鉛と水銀を反応させることを考え、KOH水溶液と水銀の濡れを界面化学的に検討した。まずKOH水溶液の表面張力、KOH水容液ー水銀間の界面張力を測定し、その結果を元にアントノフの法則を使い、KOH水溶液中の亜鉛に対する水銀の濡れに関する拡張係数を求めた。その結果、KOH水溶液濃度が高い方が拡張係数が大きくなり、よく濡れることがわかった。したがって亜鉛に水銀を添加する場合は、なるべく電池に使用する電解液濃度で行なうのがよいという結果を得た。 水銀添加量を低減する目的で種々の添加元素が提案されているが、本研究では水銀との濡れという観点から添加元素についてまとめてみた。その結果、Al,Cd,In等水銀低減下に有効な元素はKOH水溶液中で水銀とよく濡れ、Ni,Co,Fe等亜鉛の自己放電に関し悪影響を及ぼすといわれる元素のほとんどは水銀と濡れないことが判明した。このような元素は水素過電圧が小さく、また水銀との濡れが悪いので水銀によりカバ-されないためによるものと考えられた。
|