本研究では、精密プレス加工において、プレスに取り付けた金型に偏心荷重が加わった場合、所要の製品精度を得るために必要な金型及びプレスの適正な剛性配分を検討することを目的とした。 先ず、圧縮工具と圧縮工具の横変位を測定するためのタ-ゲットを取り付けたダブルプランジャ-式試験機を試作した。金型はボ-ルリテ-ン支持脱着形のガイドポスト方式で、剛性を3種に変化させた。本試験機によりウレタンゴム試験片を圧縮して偏心荷重をかけた時のタ-ゲット先端横変位を測定し、一方、ポストのたわみ量とボ-ルガイドのボ-ルの変形量を考慮して導いた計算式よりタ-ゲットの変位を求めて実測値と比較し、計算式の妥当性を示した。そして、ガイドポストを二重にすることにより、ポンチ(タ-ゲット)先端変位を小さくできることを、計算と実験により確認した。 次に、この金型を35トンC型フレ-ムクランクプレスに取り付けて、ウレタンゴムを偏心圧縮して振動負荷実験を行い、金型の動的挙動、すなわち偏心モ-メントに対するタ-ゲット先端の変位と上型の傾きを測定した。そして、金型のみの負担するモ-メントを金型のガイドポストのひずみより計算した結果、本実験の場合には、偏心圧縮による力のモ-メントの90%をプレスが負担し、残りの10%を金型が負担することがわかった。さらに、プレスと金型のそれぞれ単独の動特性(偏心モ-メントと金型の上板あるいはプレススライド下面の傾きとの関係)から、プレスに金型を取り付けた場合の動特性を推測する方法を示した。今後、通常のプレス作業においてプレスと金型のモ-メント分担率を調査することは有意義である。
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