研究概要 |
急冷凝固法及び粉末冶金法の適用により,実用金属中最も軽いマグネシウム合金材料の特性向上を図ることを目的として,AZ91及びZK61合金に種々の合金元素を添加した組成について,噴霧ロ-ル法により急冷凝固フレ-クを作製し,固化成形してP/M材とし,その材料特性を評価した。得られたフレ-クは,1〜21μmの微細なデンドライトセルから成る組織を呈し,10^4〜10^5K/Sの速度で急冷凝固したと見積もられた。フレ-クを冷間プレスの後、633Kで熱間押出しして中7mmのP/Mとした。 AZ91合金(Mgー9.2Alー0.7Zn)にSi,Ni,Ceなどを添加した急冷凝固P/M材を溶体化水焼入れ後,433Kで等温時効して硬化挙動をしらべた。その結果,Si添加合金が最も高いピ-ク硬度を示し,Ni及びCe添加合金は硬化をほとんど示さなかった。ZK61合金(Mgー6Znー0.7Zr)にSi,Ni,Mn,Ceなどを添加した場合は,403Kでの時効処理においてNi及びCe添加合金以外は硬化したが,Mn添加合金で最も硬化量が大きかった。 AZ91系では,Si添加合金のF材で371MPaの引張強さが最も高く,ZK61系ではCe添加合金が554MPaの引張強さを示した。Ce添加のZK61合金の比強度は295MPaで,高カAl合金ばかりでなくTiー6Alー4V合金の比強度をも上回る値が得られた。高温引張特性では,F材ではとくに微細結晶粒組織となるため,粒界が変形に寄与するようになり,そのため低い強度と高い延性を示した。溶体化熱処理により結晶粒成長が起るため,T6材がF材より高い強度と低い延性となった。合金元素無添加のAZ91合金P/M材では,573Kで400%を越える高い伸びを示し,超塑性を発現していた。塑性加工法に難があるマグネシウム合金において,このような高い延性が得られたことは注目に値すると思われる。以上,急冷凝固法をマグネシウム合金に適用することは,材料特性の向上に有解であることが実証された。
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