研究概要 |
1.Ni基合金系における析出粒子の粗大化挙動は次のようになる. (1)弾性拘束が弱い系では,粒子は時効時間tの1/3乗に比例して粗大化する"t^<3/1>則"が成り立つ.また,粒子サイズ分布は時効が進行しても事実上変化せず,平均サイズに関する"スケ-リング則"が成り立つ. (2)弾性拘束が強い系では,t^<3/1>則から大きくはずれ粗大化の停滞が起きる.さらに,サイズ分布も時効の進行とともにシャ-プになる,すなわち粒子の均一化が起き,スケ-リング則は成立しなくなる.これらの現象は,格子ミスフィットが大きく,界面エネルギ-密度が小さく,析出量が多いほど,すなわち弾性相互作用の効果が強いほど顕著に現れる. 2.弾性拘束の強い系にみられる粗大化現象は,従来の界面エネルギ-のみを駆動力とするオストワルド成長理論では説明不可能で,界面エネルギ-に加え,弾性エネルギ-特に粒子間弾性相互作用エネルギ-をも考慮した"分岐理論(Bifurcation Theory)"により初めて説明することができる.この分岐理論は,弾性拘束系におけるオストワルド成長をも含めた粗大化挙動を統一的に説明することができる. 3.Fe基規則合金中の整合析出粒子においても,弾性拘束が弱い場合には従来のオストワルド成長がみられ,弾性拘束が強い場合には粗大化の遅滞や粒子サイズの均一化などが起きる.これらの挙動は分岐理論により説明することができる. 4.結晶構造が異なるNi合金系とFe合金系において同様の粗大化挙動が見られることは,組織変化に及ぼす弾性エネルギ-の影響が弾性拘束系に特有のものである可能性が強いことを示唆している.
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