研究概要 |
初年度において試料溶液中での焦電センサ-プロ-ブ内のPZT焦電セラミックと励起レ-ザ-光束との相対的な位置関係が焦電型光熱分光法の信号に大きく影響することが問題となっていたが,最終年度においてこの問題を理論的に検討した。すなわちステップファンクション型のレ-ザ-照射と断続レ-ザ-光照射に対して各々レ-ザ-光の“1/e"半径を考慮した連続円筒熱源と強度が正弦的に変化する直線状熱源をモデルとして考察し,試料溶液中でのPZTとレ-ザ-光間の調整可能な距離に加えてセンサ-プロ-ブ内での特性距離を考えることによって,ステップファンクション型による信号強度と遅れ時間,断続型でのロック・イン増巾器からの信号強度と位相とを完全に説明することができた。 バッチ式の吸光分析では焦電センサ-を新らしく作製することにより最終年度においては1.6×10^<ー4>cm^<ー1>の検出限界を得た。この値は光源強度を考慮すれば他の光熱分光法と同程度の低い値であり焦電型光熱分光法が充分に利用価値のあるもので確かめられた。フロ-式の吸光分析では検出限界は0.97×10^<ー4>cm^<ー1>とバッチ式のものよりも少しではあるが良好な値を得た。これは焦電型光熱分光法が試料溶液による光吸収の結果生じる熱を直接に検出するため,PZTとレ-ザ-光が0.1mm程度に近接している状態では溶液の流れにあまり影響されないことを示唆するものである。モリブデンブル-法をもとにしてリンおよびケイ素などのフロ-インジェクション分析を試み,0.5ppm程度の濃度の試料溶液であれば10〜30μlの量で充分に分析可能であることを確かめた。今後実用に供するためには,フロ-セルの改良,センサ-プロ-ブの更なる改善,レ-ザ-ダイオ-ド光源による装置の小型化や高感度化などが望まれる。
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