研究概要 |
本研究では3種の層状無機化合物(MoO_3,WOP_2O_7,Ti_2O_5)の層間にフェナントロリンを挿入した層間化合物を合成し,その炭素化により無機/炭素層間化合物を誘導することを試みた。さらに得られた層間化合物のキャラクタリゼ-ションも目的にした。その結果つぎのような結論を得ることができた。 1.理想的構造をもった目的の無機/炭素層間化合物を得るには至らなかった。しかし,不完全な状態の炭素層が挿入された無機/炭素層間化合物を合成することができた。まだキャラクタリゼ-ションは行っていない。 2.実験目的を完遂できなかった最大の理由は,層間のフェナントロリンが充分に炭素化する前に無機層が反応,変化してしまったことにある。今後はさらに耐熱性の高い無機層状化合物を使用するか,できるだけ低い温度で炭素化を促進する方法を導入することが必要である。 3.無機/有機層状複合体の還元反応は,通常の無機/カ-ボンブラック混合物に比べて数100℃も低温から開始した。 4.無機/有機層状複合体の熱処理過程は,無機/カ-ボンブラック混合物と基本的には同じである。従って,一部の例外を除いて熱処理によって析出する結晶相は,両試料との同じである。 5.無機/有機層状複合体は,通常の無機/カ-ボンブラック混合物に比べて,高温処理後も出発原料の結晶形態をそのまま残しやすい。従ってこうした複合体を使用により,炭化物単結晶を合成しうる可能性が示唆された。
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