研究概要 |
ホスト・ゲスト反応の活用は、溶融、固相反応、水熱法等の通常合成法では合成可能な準安定な新化合物をもたらす。そのため新化合物に種々の特異的機能の発現が期待される。本研究では、層状構造のNa_2W_4O_<13>およびトンネル構造のK_2W_4O_<13>を出発物質とし、ホスト・ゲスト反応の活用により新タングステン酸化合物の合成を行ない、それらの諸機能を評価した。また層状構造のK_2Mn_2O_8を出発物質とし、新マンガン酸化合物の合成をも試みた。 1.層状構造のNa_2W_4O_<13>中のNa^+イオンは溶融塩中の1価ゲストイオンと容易に交換することを見いだし、Na_2W_4O_<13>と同型構造で通常法では合成不可能なLi_2W_4O_<13>、K_2W_4O_<13>、Rb_2W_4O_<13>の合成に成功した。新Li_2W_4O_<13>は出発試料の電気抵抗の約1/1000の値を示した。 2.トンネル構造のK_2W_4O_<13>中のK^+イオンは溶融塩中の1価ゲストイオンと容易に交換することを見いだし、K_2W_4O_<13>と同型構造で通常法では合成不可能なLiKW_4O_<13>、Na_<1.4>K_<0.6>W_4O_<13>、Rb_<0.8>K_<1.2>W_4O_B、Ag_<1.5>K_<0.5>W_4O_<13>の合成に成功した。またK_2W_4O_<13>の酸処理により得られたトンネル構造のH_<0.25>K_<1.75>W_4O_<13>は、水溶液中のK^+イオンに対してイオン記憶機能を有する可能性があることも見いだした。 3.K_2Mn_4O_8中のK^+イオンと水溶液および溶融塩浴中の1価ゲストイオンとの交換により、層状構造で水和物のR_2Mn_4O_8・nH_2O(R=Li,Na,Ag,NH_4;n=1〜2)や無水和物のR_2Mn_4O_8(R=Li,Na,NH_4)の合成が可能であることを見いだした。
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