研究概要 |
ヘテロポリ酸は選択酸化反応用触媒として実用的にも有効な触媒である。本研究では特異な酸化能を有する混合配位型ヘテロポリ酸に注目し、選択酸化の大幅な収率向上を目指した触媒設計を試みた。本年度の成果は以下のようである。 (1)混合ヘテロポリ酸の合成とキャラクタリゼ-ション:ケギン型ヘテロポリ酸(H_xPM_<12>O_<40>;M=Mo,W,V)の混合配位型アニオンを合成し、その構造をNMRで解析した。MoとWの混合水溶液を原料とすると、予想通りMoとWがランダムに分布したH_3Mo_<12-x>W_xO_<40>となった。分析のない均一な混合配位アニオンの合成を検討し、Mo_9W_3、Mo_3W_9およびMo_<11>V、Mo_<10>V_2において、比較的高い純度のアニオンが得られる事が分った。 (2)混合配位ヘテロポリ酸によるオレフィンのH_2O_2酸化:シクロヘキセン、シクロペンテンをH_3PMo_<12>O_<40>を触媒としてH_2O_2酸化すると対応するアルデヒドが得られる。H_3PW_<12>O_<40>は活性が低いが、混合配位型であるH_3PMo_6W_6O_<40>を用いると、活性はH_3PMo_<12>O_<40>に比べて約一桁向上し、アルデヒド選択性も高くなった。H_3PMo_<12>O_<40>の新規な酸化触媒として注目されている。 (3)アルデヒドの気相酸化反応:H_3PMo_<12>O_<40>はアセトアルデヒドの気相酸化に活性であるが、選択性がやや低い。触媒の酸性はこの反応に必要ではあるが、強度が高すぎると選択性が低下する傾向が見られた。そこで、酸性を弱め、酸化力を向上させるためVの混合配位(H_<3+x>Mo_<12-x>V_xO_<40>)を検討したところ、酢酸の選択性はxの増加とともに向上し、本反応でも混合配位の有効性が明らかになった。以上、工業的に重要ないくつかの酸化反応についてヘテロポリ酸の混合配位型が優れた機能を発揮することを明らかにした。
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