研究概要 |
新型二次電池として導電性高分子を正極活物質とし,リチウム負極と組み合わせることにより,エネルギ-密度が高く,かつ軽量フレキシブルな二次電池を構成することができる。この目的に沿った導電性高分子を電解重合により作製,評価することを目的としている。 その研究成果を以下に示す。 1.非プロトン性溶媒であるプロピレンカ-ボネ-ト中よりポリアニリンを重合することを明らかにしてきたが,さらにポリアニリン重合の条件を明らかにするために重合溶媒の誘電率,粘度,ドナ-数を変化させ重合した結果,活性なポリアニリン重合には溶媒の誘電率,及びドナ-数が大きな影響を与えていることが明らかとなった。またこれらポリアニリンを正極とし様々な溶媒を用いたリチウム電池を構成し,充放電特性を評価したところ,電解液の溶媒粘度及び誘電率による影響が大きく現れ,特にプロピレンカ-ボネ-トージメトキシエタン混合溶媒は従来のプロピレンカ-ボネ-ト単独溶媒より,大電流で充放電が可能となった。 2.膜のモルフォロジ-制御のため複合材料としてNBRを用い,NBRの分子構造,ガラス転移点を変化。また重合支持塩を変えてポリピロ-ルを重合し生成したポリピロ-ル膜の基礎特性及び電池特性を評価した。作製条件の最適化を行うことにより従来のポリピロ-ルの2〜3倍の大電流まで充放電可能なポリピロ-ルカソ-ドを合成することが可能となった。 3.ポリアズレンーポリピロ-ル複合膜の作製に成功し,安価なピロ-ルによりコストの低減化,アズレンにより充電電圧及びエネルギ-密度の上昇が見られた。この複合膜の電気化学的特性をインピ-ダンス法にて評価したところアズレン50〜75mol%以上において膜内アニオン拡散速度及び膜容量の増加がみられ,電池特性ともよい一致を示すことが明らかとなり,膜の基礎特性と電池特性との相関性を示唆することができた。 4.ポリアニリン膜の機械的強度が劣ることに対し,膜強度の強いポリピロ-ル膜との積層化をおこなうことによる膜強度の改善を行った。さらに,重合条件からくる下地層のポリピロ-ルの電気化学的性質が積層膜の充放電容量に影響を与え,ラフネスが高くド-プ率に優れたポリピロ-ル下地を用いた複合膜が良好な充放電特性を示すことを明らかにした。またこの積層膜をインピ-ダンス法で評価し,電池特性との比較から,インピ-ダンス法の評価の有効性および限界を明らかにした。 5.ポリピロ-ル膜に,ポリマ-アニオンであるポリスチレンスルフォン酸をド-プすることにより,この膜が実際上リチウムイオンのド-プ・脱ド-プを可能とすることを明らかにした。特にジメチルスルフォキシト溶媒によりまず,活性な膜ができ,それをプロピレンカ-ボネ-トで置換することにより電池系への応用が可能であることを明らかにした。
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