研究概要 |
遷移金属触媒による水素化反応は有機化合物の還元法として広く利用されちる重要な反応であるが、その選択性は基質の構造のみならず触媒の種類などによっても変わるため、選択的還元については未だ不明の点が多く残されている。本研究では、選択的接触還元の触媒設計の基礎を確立する目的で非共役不飽和ケトンである5,6-ジメチル-5-ヘプテン-2-オン(I)と4-イソプロピリデンシクロヘキサノン(II)および共役不飽和ケトンである2,3-ジメチル-2-シクロヘキセノン(III)のVIII族金属触媒による水素化の化学選択性について検討した。 IおよびIIの水素化の化学選択性は触媒金属により非常に異なり、触媒金属の各周期ごとに Ni<Co;Pd<Rh<Ru;Pt<Ir<Osの順に不飽和アルコ-ル選択性を増加し、PtとPd触媒は選択的に飽和ケトンを生成したが、Co触媒は逆に不飽和アルコ-ルを選択的に生成した。以上の触媒金属の不飽和アルコ-ル選択性の順は各周期の金属の酸素に対する親和力の増加に序列に対応することに注目し、各触媒金属の化学選択性の差は金属固有の性質の差が触媒表面に反映することに基づくものと推定した。 一方、IIIの水素化における各触媒の化学選択性は、I,IIの場合と類似の傾向を示し、PtとPd触媒は選択的に飽和ケトンを生成したが、その他の触媒の不飽和アルコ-ル選択性は一般にI,IIの場合より非常に低下した。しかし、Os触媒のその選択性はCo触媒よりも優れ90%以上に達した。以上の事実は、血はI,IIの場合と異なり水素の1,4付加による飽和ケトンの生成経路が加わり、この経路の寄与がOs<Ru<Coの触媒順に増加することに基づくものと考えた。 以上の本研究結果は非共役および共役不飽和ケトンの接触還元における化学選択的触媒設計に対し一つの指針を与えたことになる。
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