研究概要 |
本研究室では既に報告した2核鉄錯体(HBpz_3)FeO(OAc)_2Fe(HBpz_3)(1)(HBpz_3=ヒドロトリス(1-ピラゾリルボレ-ト))を触媒とする炭化水素の酸素酸化反応の活性の向上を計り、約10倍活性の高い触媒系を見いだすことに成功した。新しい触媒系は新規なμ-オキソ2核鉄錯体[(HBpz_3)Fe(hfacac)]_2O(2)を触媒とする。2は1をヘキサフルオロアセチルアセトン(Hfacac)で処理することによって獲られ、X線結晶解析によりヘキサフルオロアセチルアセトナ-ト(hfacac)それぞれ片側の鉄にキレ-ト配位子オキソのみが2つの鉄に架橋した構造を持つことが明らかとなった。2とプロトン供与体としてヘキサフルオロセチルアセトン、電子供与帯としてZn粉を組み合せた触媒系は種主の炭化水素化合物の酸素酸化に有効であり、アダマンタン、ペンタン、ベンゼンをそれぞれタ-ンオ-バ-数で50、10、10で1-アダマンタノ-ル、2-ペンタノ-ル、フェノ-ルへ水酸化できる。これらの値はこれまで報告されていたアルカンの均一系酸素酸化ては最も多角、またベンゼンを水酸化できることは極めて注目される。上述の反応機構を明らかにすることを目的に中間体として考えられる鉄-酸素錯体の合成を試みた。錯体を安定かするためにHBpz_3の3,5位をイソプロピル基で置換した配位子HB(3,5-^1Pr_2pz)_3を用い、酸素を可逆的に結合できる鉄(II)錯体Fe(OBz)(HB(3,5-^1Pr_2pz)_3)の合成に成功し、共鳴ラマンより酸素付加体がμ-パ-オキソ2核鉄錯体であることを明らかにした。この系は酸素を可逆的に結合する非ポルフィリン錯体ては始めての例であり、上述の酵素酸化反応の中間体のみならず、非ヘム鉄モノオキシゲナ-ゼのモデルとしても興味深い。
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