研究概要 |
アルキルモノシラン,アルキルジシランおよびその重水素化合物を系統的に合成し,そのEIMSを測定し,分子イオンからの分解経路を溶液反応と対比させて検討した.アルキルシランのフラグメンテ-ションはアルカンのそれとは異なり,溶液反応で説明されるイオン種が大きく現れた.ケイ素化合物が求核試薬の攻撃を受けるときのσーπ共役による安定中間体は,モノシランのm/z73(CH_3SiH_2CH_2CH_2^+が大きなピ-クとなったことに相当する.このイオンについてab initio MO計算によって安定性の検討を行った.その結果,SiH_2ーCH_2とその隣のCH_2ーCH_2結合の長さが分子イオンのそれよりも短くなり,また,この2つの結合のなす角度はほぼ直角になって,CH_3ーSiH_2のσ結合とβ位のカルボカチオンの空のp軌道の間に,σーπ共役のできたことが確かめられた.ジシランの1,1,2,2ーTetramethyldisilaneの特微的なピ-クもモノシランと同じm/z73であったが,重水素化合物などの結果から,SiーSi結合の開裂の際,異なるケイ素上のメチル基と水素原子とが同時に移動したイオン(CH_3)_3Si^+であることを確かめた。この反応の中間体は四員環構造をとると考えている.アルキルシランの分解では分子を脱離する再配列過程が優勢で,溶液反応との類似性をうかがわせた.つぎに,CH_3CNとMe/AcONH_4を溶離液にして,Dimethylphenylchlorosilane(MW=170)のLC/MSによるスペクトルを測定した.溶離液とのイオン分子反応は,物性のわかった溶離液の使用で目的物質の反応・物性が検討できる.いずれのスペクトルにもMH^+のm/z171のほかCH_3CNの付加したm/z212とMeOHの付加したm/z202が現れた.2つの溶離液による違いは,分子イオン群のm/z170とm/z171との強度比に明かな差を見いだせたことである.これに関する研究は今後の検討課題にしたい.
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