研究概要 |
ハイドロボレ-ション反応はすでに多くの有機合成反応に利用されているが通常無触媒下で進行するため触媒的ハイドロボレ-ションの研究はほとんどなされていない。しかし,触媒下では無触媒下での反応と異なる立体選択性,官能基選択性,位置選択性を示す可能性がある。本研究ではPd,Rh触媒存在下でのカテコ-ルボランによるハイドロボレ-ションについて研究し,これらの選択性に対する検討および新規な有機ホウ素反応試剤の合成と有機合成への利用を調べた。 (1)多官能性有機ホウ素化合物の合成とクロスカップリング反応。水素化ホウ素化合物は還元性の強い試薬であるがRhー触媒下では二重結合への付加がカルボニル基の還元より優先する。この方法によりケトン性カルボニル基を有するボロン酸誘導体を収率良く合成できた。得られたボロン酸エステルとハロゲン化ビニル,アリ-ルとのクロスカップリング反応も検討し有機合成への利用を調べた。 (2)アリル型ホウ素化合物の立体選択的合成。アリル型ホウ素化合物はジアステレオ選択的アリル化剤として有機合成上重要であるPdー触媒存在下で共役ジエンとカテコ-ルボランを反応されると14ーは付加体であるアリル型ホウ素化合物が収率良く得られた。反応は立体選択的でありシス体のみを99%以上選択的に与える。 (3)不整ハイドロボレ-ション。ClRh(COD)とDIOP,BINAP,CHIRAPHOS,BPPFAから調製した不整触媒を用いて代表的なオレフィン類の不整ハイドロボレ-ション反応を検討した。ノルボルネンでは59%ee,またインデンでは74%eeと高い不整収率が得られ,光学活性有機ホウ素化合物合成の有効な手法となることを証明した。
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