研究概要 |
アルケニルテルリドとして(E)-および(Z)-ジスチリルテルリドならびに(E)-および(Z)-スチリルフェニルテルリドを合成し、各テルリドとLi_2PDCl_4ならびにPd(OAc)_2との反応をアセトニトリル溶媒中で行なった。それぞれの反応における生成物の単離収率ならびに異性体比は次のようであった。Li_2PdCl_4との反応:55%(E,E:E,Z=66:34);69%(E,E:E,Z:Z,Z=22:47:31);41%(E,E:E,Z:Z,Z=63:35:2);73%(E,E:,Z:Z,Z=20:52:28)でいずれも生成物は1,4-ジフェルニブタジエンであった。後二者からはリガンドカップリングで期待されるスチルベンも得られたがその収率は10%以下と低かった。一方、前二者とPd10AeL_2との反応ではリガンドカップリングによる生成物は全く得られず、テルルがアセトキシ基で置換を受けた酢酸スチリルがそれぞれ56%(E:Z=96:4)と58%(E:Z=18:82)の収率で単離された。 通常、有機テルリドとパラジウム(II)塩は(R_2Te)_2PdU_2や〔(R_2Te-PdCl_2〕_2などの錯体を形成するものとされており,今回、著者らの見出した知見、すなわち炭素-テルル結合が切断されて炭素-炭素結合あるいは炭素-酸素結合が形成されるという発見は有機テルルの化学の分野において基礎的な面で重要である。 一方、ジフェニルテルリドおよびジドデシルテルリドとLi_2PdCl_4との反応では〔Ph_2Te)PdCl_2〕_2形成および1-ドデセン〔58%)の生成におわり、Pd(10Ae)_2との反応では(Ph_2Te)_2Pd10Ae)_2形成および1-ドデセン(84%)の生成が起こり、いずれからもリガンドカップリングあるいは炭素-炭素合成生成は起こらなかった。
|