研究概要 |
従来,パラジウム解媒を用いるアリル化合物のカルボニル化によるβ,γー不飽和脂肪酸生成反応は,常温,常圧下では因難とされていた.数年前,本研究者らは,強塩基である^-OH,^-ORを共存させれば,常圧下でもカルボニル化が容易に進行し,塩基を滴下すれば,副反応が抑制され,目的とするβ,γー不飽和脂肪酸が高収率で得られることを明らかにした. 本年度は,反応操作の簡略化と,触媒組成の単純化を目ざし,主として塩化シンナミルを用いて,反応の最適化を検討した.アルカリ水溶液/有機溶媒の二相系でのカルボキシル化反応では,触媒として水溶性ホスフィン配位子をもつPdCl_2[Ph_2P(mーC_6H_4SO_3Na)]_2が最も好ましい結果を与えた.カルボニル化の Key step は, PdーCよりも PdーO への CO の挿入によるヒドロキシカルボニル基の生成であり,これが水相でおこり易いためであろう.一方, CH_3ONa/CH_3OH 均一系のカルボニル化は,ホスフィン配位子のない単純な触媒系が,高収率でメチルエステルを与えた.ホスフィン錯体は,主生成物としてメチルエ-テルを与えた.すなわち,カルボメトキシ化と,^-OCH_3 による求核置換反応によるアリルメチルエ-テルの生成反応のどちらが先行するかは,触媒系の微妙な差によって大きく変わる. 反応操作の簡略化,触媒組成の単純化では成果が得られたが,本反応を一般的な合成反応として提案するには,さらに反応機構の詳細な検討が必要と思われる.
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