研究概要 |
水中の二分子膜会合体はゲルー液晶相転移温度(Tc)よりも低い温度での熟成によって、ヘリックス超構造体に形態変化することがある。本研究は、このヘリックス超構造体について(1)形成に影響する諸因子と(2)分子配向・パッキングなどを検討したもので、以下の成果を得た。 1.キラル二分子膜について構成分子の疎水鎖長とヘリックス形成の関係を系統的に調べた結果、鎖長が長くなるとヘリックス超構造体は形成されにくくなることがわかった。 2.ヘリックス超構造体は水素結合基を有する一鎖型キラル両親媒性化合物のみならず、アキラル両親媒性化合物からも形成され、不斉はヘリックス形成にとっての必要条件ではないことがわかった。しかし、ヘリックス超構造体は不斉な膜化合物から成長しやすいので、ヘリックス形成には、不斉,水素結合,そして適当な長さの疎水鎖という3つの要素が大きく影響することを明らかにした。 3.ヘリックス超構造体の形成には、上の分子構造上の因子の他,熟成条件も大きく影響する。特にアニ-リングは一定温度での熟成よりもヘリックスの成長を促進する作用がある。 4.可視・紫外スペクトルおよびFTーIRスペクトルはヘリックスの大きさとは無関係で、小さいヘリックスも巨大なヘリックスと同様のスペクトルとなった。つまり、これらのスペクトル挙動が同じであればヘリックスではない会合体であっても局所的にはヘリックスと同じ分子配列様式を有する可能性がある。 5.上で述べたスペクトルは、成分分子の疎水鎖に含まれる炭素数の偶奇によって異なることがわかった。この偶奇鎖長効果はヘリックスが観察できない二分子膜についても見られ,偶数炭素鎖型と奇数炭素型の二分子膜は、全く異った分子配向・パッキング状態にあることがわかった。
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