研究概要 |
パッシブなソ-ラシステムの中に,太陽熱蓄熱を目的として蓄熱材に相変化物質(PCM)を用いて潜熱蓄熱を行う蓄熱壁あるいは屋根と呼ばれるものがある。これらは面受熱型(SHT型)であり,外気側にある壁あるいは容器の表面は高い温度になり,外気側への輻射や対流による熱損失が多く,蓄熱効率の面で不利な点がある。この欠点を改良する方策の1つとして,太陽光に対して透過性を有するPCMを用いて,本研究代表者らが提案した体積受熱型(VHT型)ソ-ラコレクタと同様に,太陽光の内部透過に基づく内部加熱効果を利用して蓄熱する方式が考えられる。このような系では,表面温度が低いと同時に,融解が内部から起こり,高い蓄熱効率が期待される。そこで本研究では,半透過性PCMを用いた直接太陽熱蓄熱に関して,平板系を対象として,まず屋内において一定入射量下にて設置角度,PCM厚さを変化させて蓄熱過程の系内温度分布の経時変化を実測するとともに,2次元熱移動・運動量移動を考慮した理論解析を試みて両結果を比較し,諸因子の蓄熱特性への影響を検討した。その際,SHT型の潜熱蓄熱およびVHT型の顕熱蓄熱も比較対象とした。ついで屋外において同様に蓄熱特性を調べ,屋内実験の結果とあわせて本方式の適用性について検討を加えた。その結果以下のような結論を得た。1)理論解析結果は実験結果と傾向的に良い一致を示し,本理論解析はおおむね妥当である。2)VHT型の潜熱蓄熱は,SHT型の潜熱蓄熱やVHT型の顕熱蓄熱より蓄熱特性が優れている。3)VHT型の潜熱蓄熱においては,蓄熱過程全般での内部加熱効果,融解過程と液相時での自然対流の流動・伝熱効果が蓄熱特性に大きく影響する。これらの効果は設置角度,試料厚さにより異なる寄与を示す。4)屋外実験の実験範囲では,VHT型の潜熱蓄熱における実用上の最適な設置角度は太陽の南中時の入射角である。
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