研究概要 |
肝臓薬として用いられているグルタチオンの最適生産について研究を行った。パ-ソナルコンピュ-タと培養装置を直結してオンライン計測制御用培養システムを開発した。このシステムを用い,菌体の比増殖速度とグルタチオン比生産速度の関係を調べた。その結果,比増殖速度が低い場合,比増殖速度が上昇するとともにグルタチオン比生産速度は増加した。しかし,比増殖度が高くエタノ-ルが生産されるような条件では,比増殖速度が上昇するとともにグルタチオン比生産速度は減少した。この関係をもとに培養最終時刻において菌体内グルタチオン含量を高濃度に一致させ,しかも総生産量が最大となるような比増殖速度の最適パタ-ンを求めた。最大原理により解析した結果,比増殖速度の最適なパタ-ンは,培養開始後,最大に保ち,その後,グルタチオン比生産速度最大を与える比増殖速度に切り替えるパタ-ンであることがわかった。求められた最適な比増殖速度のパタ-ンに新たに開発した比増殖速度推定制御系により実現した。菌体のアンモニア消費速度を観測し,拡張カルマンフィルタ-により比増殖速度をオンライン推定した。そして半回分培養系に適した制御系であるPF System(Programmed Controller/Feedback Compensator System)により,制御した。この制御系は,フィ-ドフォワ-ド機構とフィ-ドバック機構を持った制御系であり,これを用いて比増殖速度を最適パタ-ンに追従制御することができた。比増殖速度を最適パタ-ンに追従制御する培養法により,グルタチオン生産量は通常法より増加し,本法の有効性が確認された。この方法は比増殖速度と比生産速度に相関のある他の発酵プロセスにも適用できると考えられる。
|