研究概要 |
希土類金属イオンに配位子交換速度が速くかつ負の錯イオンを生成する反応を作用させると、生じた錯体量に応じてイオンの価数は正から負に変化し、希土類金属イオンを見かけ上両性電解質に変換される。その結果、複数の希土類金属イオンが溶液中に存在していても、それぞれの錯安定度定数が異なれば希土類イオンの有効電荷が異なるので、電気泳動による分離が可能となる。本研究では、電気泳動法による希土類元素の高度連続分離の可能性を理論・実験の両面から検討した。理論面では錯形成反応を伴う希土類イオンの移動度を定式化し、移動度とpH、配位子濃度、希土類金属イオン濃度との間の関係を明らかにした。さらにこれらの関係式とイオンの輸送方程式を用いて泳動分離帯の解析を行い、本法のもつ分離能力を定量的に評価した。連続分離の実証実験は、EDTAを錯化剤とし濾紙と薄層充填層型電気泳動槽を用いて行った。濾紙を用いた実験では、混合軽希土(La,Ce,Pr,ND)と重希土(Dy,Ho,Er,Yb)の4成分同時分離を行い、適切な泳動液pHを設定すれば混合希土類の連続分離が可能なことを確かめた。薄層充填層型電気泳動槽では、上記の混合軽希土類の連続分離について定量的な検討を加えた。希土類イオンの濃度分布は理論で導出したガウス分布に一致し、分布の広がりは流通式充填層の有効拡散係数で決まることがわかった。原子番号が隣接する希土類元素においても、滞留時間1時間程度の泳動を行えば分離係数100程度の高度な分離が達成できることがわかり、本法の工業化の可能性が明らかとなった。
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