本研究はいくつかのサブプロジェクトからなり、得られた知見は次のようにまとめられる。 臨界点近傍における流体の熱力学基礎物性: 室温からわずかに高温側に臨界温度を持つ流体に対して、臨界点のごく近傍での圧力・密度・温度関係を実測し、同時に臨界物性を決定した。従来から用いられている均一分子場モデルにかわって、スケ-リング則にもとづく非古典的状態式の有効性とその問題点を明らかにした。 臨界流体中への固体の溶解度と混合系の相挙動: 四種類の臨界流体と十種類以上の有機固体とからなる二成分混合系の相挙動ならびに溶解度を広い温度・圧力範囲で実測した。固体の溶解度に及ぼす置換基の効果や臨界流体の溶媒能力を電子物性的な立場で解釈し、溶媒選択における経験的則を提出した。同時に、複雑な相挙動を三相共存点の軌跡に重点をおいて分類することを試み、固体・液体・気体を含む混合系の相挙動を6種類の骨格図で分類することができた。 溶液の密度勾配と溶質クラスタ-サイズ: 一般には均質と考えられている溶液を長時間放置すると溶液中に密度勾配が生じる。この現象を溶質クラスタ-の重力場でのブラウン運動で説明することを試み、そのクラスタ-サイズが10nmを越すほど大きく溶液を均質なものとして捉えることの問題点を明らかにし、新たに開発した瞬間凝固法と電子顕微鏡観察からこれとほぼ同サイズのクラスタ-を写真にとらえた。 超臨界流体を利用した微粒子の生成機構: 超臨界流体に溶解させた固体成分を急激に膨張させることにより得られる微粒子の生成機構を電子顕微鏡観察を基に行った。一次的な超微粒子は溶液中の溶質クラスタ-とほぼ同サイズであり、この一次粒子の置かれている環境温度を調整することにより様々な形の二次的微粒子を生成させることの可能性を示した。
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