研究概要 |
本研究は,成層圏におけるオゾン層の破壊や,対流圏における温室効果などの地球的規模の環境破壊に関与しない新しい代替フロン類の輸送性質(粘性率と熱伝導率)を,気液両相にわたって精密に測定し,信頼できる実測値を提供するとともに,最終的には世界各国で公表される代替フロン類の熱物性デ-タを収集,解析,評価し,熱物性の最確値と最良相関式を決定することを目的として実施した。研究の対象物質は,従来最も汎用されてきた規制対象フロンCFC11(CCl_3F),CFC12(CCl_2F_2)の有力な代替物質の候補であるHCFCー22,HFCー134a,HFCー143a,HCFCー123,HCFCー123a,HCFC141b,HCFCー142bである。気相の熱伝導率の一部以外は,従来使用してきた装置を用いて測定を行った。気相の熱伝導率については,従来使用してきた装置に加えて,新しく非定常熱線型の装置を試作した。当該科学研究費補助金の大部分は新しい装置の製作に充当した。1)気相の熱伝導率測定のために新しく非定常熱線型セルを設計,製作し,295K,0.1MPaにおける空気を用いて装置の検定を行った。その結果信頼できる空気の熱伝導率最確値と3%以内で一致した。2)同心円筒型熱伝導率セルを用いて上記の代替物質の気相における熱伝導率を測定し,実測値に基づき相関式を作成した。実験結果は国際会議および学術雑誌を通じて報告した。3)液相の熱伝導率については,非定常熱線セルを用いてHCFCー123をよびHCFCー141bの測定を行った。4)気相の粘性率についてはHCFCー22(CHClF_2)を一成分とする数種類の混合気体について常圧における測定を行い,種々の推算法との比較を行った。5)液相の粘性率についてはHCFCー123,123a,141bを対象として293〜343K0.1〜100MPaの範囲で測定を行い,圧力効果を表現する相関式を作成した。
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