研究概要 |
21世紀において100人規模の長期滞在を前提とした宇宙ステ-ションの建設実現に向け,ステ-ション内の閉鎖系ガス再生システムの検討を行い,システム構成および有害ガス除去工程について以下の基礎的知見を得た. ガス循環システムにおける要素技術の選定に関しては,システムを構成する(1)CO_2の除去・濃縮,(2)CO_2還元,(3)O_2再生および(4)有害ガスの酸化処理を中心としたキャビン内の環境制を御の4工程について,閉鎖系での物質収支の面から検討を行った.その結果,(1)ー(3)の工程には複数の要素技術が存在するが,(2)の工程における水素消費量,蓄積炭素の処理法が(1)および(3)の要素技術を選定する際の指針となることを明らかにした.また,(4)の工程では有害ガスの完全酸化を行うことにより生成物であるCO_2,H_2Oを(1)ー(3)の工程における循環システムに組み込むことが有効であることを示した. 有害ガス除去サブシステムに関しては,系統的な有害ガス処理法の開発を目的として酸化活性試験を行った.原料ガスはNASAレポ-トに示されている有害ガスの中から37種類を選定した.自調製したPd/Al_2O_3触媒を用い,デ-タ処理用のマイコンを接続したパルス反応装置において空気をキャリヤ-ガスとして,単一ガスの最大許容濃度範囲内における酸化活性試験を行った.その結果,以下の点を明らかにした.(1)酸化温度673Kでほぼべての原料ガスの転化率が90%以上に達し,生成物はCO_2とH_2Oである.(2)転化出の反応温度依存性に着目すると,3つのグル-プに分類できる.(3)酸化活性を評価する因子として側鎖の官能基の影響が重要である.これらより,酸化経路に基づき化合物を整理すると,系統的有害ガス処理法の研究対象となる原料ガスの数が低減され触媒の開発目標が明確になるとの結論を得た.
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