研究概要 |
グルコ-ス脱水素酵素遺伝子を変異処理し,大腸菌内で変異型酵素を生産させた。50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中で、60^0C、20分間熱処理し、酵素活性を持つクロ-ンを選択した。野生型酵素は、熱処理をする緩衝液中に2M塩化ナトリウムが存在すると、前述の熱処理で失活しないが、塩化ナトリウムを添加しない条件下では完全に失活する。スクリ-ニングの結果、12株の陽性クロ-ンが得られた。粗酵素液を調整して、pH6.5での熱安定性を検討したところ、50^0C以上で、得られたすべての変異型酵素は、野生型酵素よりも安定であった。 得られた変異型酵素は1から4のアミノ酸置換を持っていた。そのうち、4つの酸素で1アミノ酸置換が認められ、置換の生じた位置は、96番目のGlu、252番目のGlnおよび253番目のTyrで、これら3つのアミノ酸置換はグルコ-ス脱水素酵素の安定性に関与していると思われた。 変異型酵素の安定化とアミノ酸置換との関係について調べるため、1アミノ酸置換を持つ4つの変異型酵素(E96A,E96G,Q251L,Y253C)を精製し、変異型酵素の性質について検討した。 精製した4つの変異型酵素、並びに野生型酵素のpH6.5での熱安定性を比較したところY253C,Q252L,E96G,E96Aの順に高くなっていた。特に、E96Aでは野生型酵素よりも約20^0Cも安定性が増していた。 変異型酵素のpH安定性を調べたところ、アルカリ溶液中で、程度の差はあるものの、いずれの酵素も野生型酵素よりも安定であったことから、これらの変異型酵素では、各アミノ酸置換により、サブユニット間相互作用が強化され、サブユニット構造が安定化していると結論した。したがって、1アミノ酸置換が生じていた3つのアミノ酸残基は、サブユニット境界面に存在する可能性が高いと思われる。
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