研究概要 |
抗生物質は,微生物によって生産され,微生物や,その他の細胞,例えば,癌細胞の増殖を阻害する.だが,これを作る微生物は,自己産物によって自滅することはない.これを自己耐性と呼ぶ.本研究は,DNA合成阻害剤として知られるブレオマイシンに関して,その生産菌である放線菌Streptomyces verticillus ATCC15003の自己耐性に係わる遺伝子をクロ-ニングした.本菌の無細胞抽出液をアセチルコエンザイムAとブレオマイシンの混合液に加えると,ブレオマイシンの抗菌活性が消失すること,並びに,予めこの無細胞抽出液を65℃,5分加熱してから加えると,抗菌活性の消失は起こらないことから,この抽出液中に存在するブレオマイシンアセチルトランスフェラ-ゼが本菌の自己耐性に係わる因子のひとつであることを明らかにした.クロ-ニングによって得られたこのアセチル化酵素遺伝子の必須領域を詳しく調査することにより,このアセチル化酵素遺伝子(blmB)意外にも,ブレオマイシン耐性を与える別の遺伝子(blmAと命名)が存在することを明らかにした.しかも,これらの遺伝子は互いに隣接して存有していたのであった.blmA遺伝子の必須領域は,比較的短かかったことから,直ちに,この遺伝子の全塩基配列の決定を行なった.その成果として,この遺伝子によってコ-ドされる産物は,分子量13197の蛋白質であることを見いだした。予備的に調べたところ,本蛋白質は,ブレオマイシンに結合することによって,DNAへのブレオマイシン分子の結合を阻害する可能性が高いことを見いだした。 実際,ブレオマイシンは塩基性であり,反対に,blmA遺伝子産物は,酸性蛋白質であった.本研究において,blmA及びblmB遺伝子の大腸菌内での発現性を調べたところ,両遺伝子とも大腸菌内で発現することを明らかにした.
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