研究概要 |
シイタケの主要な育種対象形質の一つである子実体発生時期には,菌株間差異が認められ,高温型,中温型,低温型などの子実体発生温度型(発生型)に区分されている。この発生型に関与する遺伝因子の同定と選抜の効率化を目的として本研究を行い,以下の結果を得た。 ほだ木栽培におけるシイタケの子実体発生(温度)型は,高温型>中温型>低温型なる遺伝的優劣関係にあり,また,低温型を示す菌株は次代においてL型(この型の一核菌糸同志の交雑F_1は,概ね低温型を示す)以外の型を分離しないことを明らかにした。 木粒培養を用いた高温区(20℃)および低温区(10℃)における子実体発生の有無に関する反復試験の結果,供試した交雑F_1の85%(52/61)において同一の結果が得られ,この形質はかなり安定して発現するものと考えられた。高温区における子実体発生には,単一の優性遺伝子が関与する場面と,優性の補足遺伝子が関与する場面とが想定され,さらにこの補足遺伝子の一方は,予めラベルした標識遺伝子morー2あるいは第IV連鎖群に所属するmorー4と弱いながらも連鎖関係にあることが示唆された。 ほだ木栽培における子実体発生時期と木粉培養における子実体発生温度とは必ずしも一致するとは限らず,ほだ木栽培における低温型が,木粉培養の高温区において子実体を発生する場合も認められた。しかし,ほだ木栽培における高温型は,ほとんど例外なく木粉培養の高温区においても子実体を発生した。この結果は,木粉培養を用いて,ほだ木栽培における高温型の遺伝分析および育種選抜が可能なことを示唆しているさらに,本菌の育種・選抜の効率化のために連鎖分析の一層の進展が期される。
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